パワーナップの科学 – 昼寝の効果とその正しい方法

昼食後の眠気に襲われることは誰にでもある経験です。しかし、眠気を抑えながらの作業は効率が悪く、ミスの原因にもなります。そこで注目されているのが「パワーナップ」です。これは「nap（昼寝）」と「power up（活力を得る）」を組み合わせた言葉で、日中に行う10～30分の短い睡眠を指します。NASAやアメリカ海兵隊での研究により、集中力の向上、疲労回復、脳の活性化などの効果が確認されており、医学的にもその効果が実証されています。
「ギリシャでの研究では、心臓病リスクが3%低下したという報告もあり、健康効果が期待できます。また、リフレッシュ感が得られ、生活の質（QOL）も向上します。昼寝は、パフォーマンスと心身の健康の両方に良い影響を与えると言えます。ただし、昼寝のルールを守ることが重要です」と睡眠コンサルタントの友野なおさんは語ります。
昼寝のルールとして最も重要なのは、昼寝の時間の長さです。睡眠研究の第一人者である櫻井武先生は、「昼寝は深い睡眠に入ってはいけません。人は睡眠を始めてからノンレム睡眠のステージ1、2、3と深くなっていきますが、ステージ3に入るまでに30分以上かかります。ステージ3の深い睡眠に入ると、適切な時間をかけずに覚醒することができず、起きた時にぼんやりとしてしまい、望んだパフォーマンスが発揮できません。そのため、昼寝はステージ2までに留めるべきです」と説明します。また、長時間の昼寝は夜の睡眠に影響を与えることもあります。昼寝は30分以内、理想的には20分以内に抑えることが望ましいです。
日本でも、2014年に厚生労働省が昼寝の効果と制度導入を推奨したことで、企業が昼寝時間を設けたり、オフィスやコワーキングスペースに仮眠室を設置するなど、パワーナップが徐々に広まっています。以前は昼寝をすると怠けていると見られがちでしたが、昼寝は多くのメリットをもたらすため、積極的に取り入れることが推奨されています。パワーナップを上手に活用し、仕事の生産性を高め、病気予防にも役立てましょう。

ヤフージャパンの本社では、社員がいつでも利用できる畳敷きの仮眠スペースが設けられています。このようなリラックスできる環境は、社員の心身のリフレッシュに役立ち、効率的な仕事の推進に寄与しています。

パワーナップの効果を最大化するためには、以下の6つのルールを守ることが重要です。適切な方法で昼寝を行うことで、過度に深い睡眠に入ることなく、リフレッシュされた状態で目覚めることができます。慣れてくると、自然と短時間で効率的に昼寝から覚めるようになります。

昼寝はランチ後から午後3時までの時間帯が最適です。これは午後の眠気のピークに合わせたタイミングで、夜の睡眠に影響を与えずに済むためです。午後3時を過ぎると、夜の睡眠に悪影響を及ぼす可能性があります。

光や音が気になる場合は、アイマスクや耳栓を活用しましょう。これにより入眠しやすくなります。また、寝顔を他人に見られるのが気になる場合にも、マスクが有効です。

机にうつ伏せになるか、椅子に寄りかかって目を閉じるだけでも昼寝の効果は得られます。壁が近くにある場合は、壁に頭を預けて固定すると、よりリラックスして昼寝ができます

昼寝から確実に起きるために、スマートフォンのアラーム機能を活用しましょう。昼寝前に20分後にアラームをセットしてください。ただし、アラームが周囲に迷惑をかけないように配慮することも大切です。

昼寝後にすぐに活動を再開できるように、昼寝の時間は長くても30分以内、理想的には20分以内に抑えましょう。30分を超える昼寝は、かえって効率を下げることがあります。

コーヒーやお茶、チョコレートなどに含まれるカフェインは、摂取後約30分で覚醒効果が現れます。昼寝前にカフェインを摂取しておくと、昼寝後にすっきりと目覚めやすくなります。

企業のみならず、最先端のコワーキングスペースやシェアオフィスでも、仮眠ルームの設置が増えています。さらに、気軽に昼寝体験ができるパワーナップ専門のカフェやスポットも登場しています。